[所有]から[脱所有]へ、時代の変化と働き方の進化

最近、ゴンチャというカフェが、人手不足の中、時給は普通にもかかわらず、宣伝なしで30人の募集に対して400人もの応募があったそうです。すごいですよね。これも、SNSなどインターネットを通じて情報がすぐに広まる現代ならではの現象だと思います。

企業側にとっても、今の時代は簡単に油断できない状況になっています。少し前までは、「しっかりお金を稼いで、就職して、結婚して子どもを持つ」という[所有]が重視される時代でした。しかし、特に新型コロナ以降、人々の価値観が変わり始めています。「お金よりも自分の生き方やライフスタイル、趣味が大切だ。結婚もしたいけど、別にしなくてもいい。車も必要ないかも」という[脱所有]、つまり物やお金にこだわらない価値観が広がりつつあります。

僕が理事を務めるボディビル業界も、この変化を感じています。かつてはボディビル大会に参加する選手は少なく、地方の大会は大赤字になることも珍しくありませんでした。例えば、約10年前に札幌で開催された体重別日本選手権大会では、北海道連盟の役員が自腹で数十万円を立て替え、何とか大会を乗り切ったという経験があります(あったと記憶しています)。

当時は、「ボディビル大会に出るために休みが欲しいだと?ふざけるな!仕事が第一だ!」といった厳しい対応が一般的でした。しかし、2017年頃からは、筋トレがアンチエイジングに効果的だという認識が広まり、職場の雰囲気も変わりつつあります。「大会がんばっておいで!」といった声が聞かれるようになり、参加者も増加しました。

さらに、サーフパンツを履いてマッスルボディを競う[フィジーク部門]が導入されたことで、参加者は急増。24時間営業のフィットネスジムも増え、今ではコンビニに[マッスルコーナー]まで設置されるほど、筋トレ文化が一般に浸透しました。

こうして、仕事がプライベートよりも優先される時代から、プライベートを大切にする時代へと変わりつつあります。特に若い世代(40歳以下)は、今の職場や待遇に執着せず、プライベートを大切にする傾向が強いようです。不当で理不尽な扱いをする企業では、誰も働きたくないですよね。

企業が円滑に営業を続けていくためには、内部で働くスタッフが何よりも大切です。お客様ももちろん重要ですが、働く人がいなければ店や会社は成り立ちません。[根]がなければ[花]は咲かないし、[コップ]がなければ[飲み物]も注げません。

この傾向が強まると、理不尽な要求をするお客様に対応し続けることで、スタッフが職場を離れてしまうリスクも増えます。結果として、過度に理不尽な要求をする「モンスター顧客」は排除される方向に進んでいくでしょう。最近では「カスタマーハラスメント」という言葉が世間を賑わすようになりました。

このような本質に気づかずに経営を続けていた企業も少なくありません。国境を越えて世界中で展開する超巨大なグローバル企業は、従業員を部品のように扱い、安く買い叩いていました。しかし、最近になってその歪みが各地で表面化してきています。これまで強大な影響力を誇っていた有名企業が、撤退や身売り、さらには買収といった衝撃的なニュースを頻繁に目にするようになりました。これまでの傲慢さが、まさに自らを追い詰めることになっているのでしょう。

占星術の観点からも、2020年頃から[土の時代]、つまり[所有]の価値観から、[風の時代]、すなわち[脱所有]の価値観へと移行しているとされています。物質的な豊かさだけでなく、心の豊かさや共同体の一体感が幸福を支える重要な要素となり、そんな価値観がますます広がっていくのだと感じています。

例に挙げたゴンチャの社長は、スタッフをとても大切にされているようです。それに比べて、自分の地位や肩書きばかりにしがみつき、従業員を軽視する経営者たちは、いずれ時代の波に飲まれてしまうでしょう([風の時代]に取り残されてしまうでしょう)。もはや経営者や部長(役員)などの肩書きにこだわる時代ではなく、互いに尊重し合い、共生と調和を重んじる社会を目指すことが、これからの時代においては一層大切だと思います。傲慢な経営者たちには、ぜひ目を覚ましていただきたいものですね(^^)。